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理事長インタビュー

地域の歴史を知り未来を支える「西神楽の村長さん」武田勇美さん

親の代より地域に暮らし、顔見知りとなっている地域住民の皆さんの空き家問題などにも親切に相談にのっているグラウンドワーク西神楽の理事長 武田勇美さんに日頃の活動についてお話を伺いました。

Q:理事長がまちづくりにかかわるきっかけは何ですか?

旭川市議会譲員を4期16年間(H11~H27)勤めました。理事長に就任したのが平成13年春ですから、併任していた時期もありました。
市議会議員は、地域住民の声を反映し問題点などを調査し、議会を通して行政に投げかけ、解決していくのが本来の姿と考えていました。
きっかけは?と言われれば、そうした活動や地域や地域の人たちの課題解決が私の進むべき道と走り始めたことだと思います。

Q:NPO法人グラウンドワーク西神楽の設立の理由は?

一番大きかったのは「さと川パークゴルフ場」を住民の力で作り上げたというのが原動力だと思います。これがこのNPO法人のできるきっかけですね。

旭川市内の河川敷のほとんどは開発局が窓口になり、旭川市に貸与されています。現在の場所も、元々は旭川市が借りて、小さな公園や河川敷の野球場など広場として地域が使っていたところです。住民の高齢化に伴い、平成11年ごろパークゴルフ場を作りたいとの要望が増え、旭川市と開発局の許可をいただき、翌年試験的に住民たちの手で3コース造成しました。これが評判がよく、平成14年に9ホール(Aコース)に拡張して住民に無料で開放できました。その年の秋から、現在のBコースとなる9ホールの造成に取りかかり、平成15年10 月に地域住民念願の18ホールのパークゴルフ場が完成しました。

費用はすべて地域の人のボランティアと寄付で賄ってきましたが、維持管理にはどうしてもお金がかかるんです。当初から無料開放していましたが、ある時期から有償で入場料というよりは、寄付として200円頂くことにしてから、何とか維持費を捻出できるようになりました。
用地の利用は河川敷は旭川市からのまた借りでしたので、許可や協議が必要なことも多く、交渉は旭川市と行い旭川市が北海道開発局と交渉するという形態でした。ワンクッションあると手続きや規制、意思疎通がうまくいかないこともありました。市の貸与期間が終了し更新をむかえるとの連絡がありました。市との話し合いで法人格を取得すれば、開発局との直接賃貸契約が結べるということを知り、グラウンドワーク西神楽としてNPO法人を設立し、直接契約をして頂き、北海道開発局 河川事務所と直接お話ができるようになったのがNPOの始まりです。

>>> さと川パークゴルフ場について

おかげさまで一番多い年で、45,000人も来場していただけるまでになりました。現在36ホールありますが、維持費に追われているのが実情です。昨年の集中豪雨で北海道各地に被害をもたらし、美瑛川が氾濫して4コース全て水に漬かりました。これまでにも、たまに下流の2コースは水に漬かることがあり、開発局によると氾濫と言っても河川敷で、堤防の内側で想定内でしたが、平成28年は違いました。

ゴルフ場の中央が本流となり4箇所のトイレやベンチ・標記看板なども全て流され、流木が雲竜柳をなぎ倒してゆくという、空前絶後の濁流でした。水が引いて直ぐに地域の住民のみならず、学生・ボランティアに多数来ていただき、回復いたしました。重機を使うと芝が使い物にならなくなるために、機械は使わずに手での作業でした。流木だけでも膨大な量で、大きくかぶった泥については取り切れないために、取るという選択肢は捨て、その上に芝の種をまくことにいたしました。芝の種と肥料だけは市から現物支給して頂きました。その結果、本年度は、何とか半分オープンが出来ました。

Q:住民の高齢化と空き家が多くなっているそうですが

この地域は、完全に高齢化してきて尚且つ、子供が少ないので、空き家が急速に増えてきているんですよね。
たとえば、子供たちは自分の生活というものを旭川市内や道外でしているので、とうさん、かあさん、じいちゃん、ばあちゃんの家を必要としないという状況になってきています。お年寄りも建物を売ろうかと思って売れない状況が出来ています。
しかも、住宅そのものが少なくても30年~40年経過し、建物そのものの価値が無いという状況です。それをどうやって流通に乗せ、売買・賃貸に持っていくかということが大変難しい事です。

売りたい人は高く売りたいし、買いたい人は安く買いたいしという思いがある中、グラウンドワークが仲立ち(すべて無料)し、相手先を探したり、マッチングさせて売れない物件を売れる物件に変えていきたいと思っています。個人売買という形で仲介手数料や諸費用が少なくなる訳ですから、流通しやすい状況をつくり、新たに西神楽に住んでいただくために、行動して貢献できればよいなと考えています。

Q:移住者の支援は、どのようなことを行っていますか

支援というか、人と人との繋がりの中で、たとえば住宅を求めてきている人、田舎暮らしがしたい、子供が小児喘息で環境の良い所に住みたい、都会暮らしで登校拒否になり、自然環境の豊かな中で子育てをしたいと考えている方の相談を受けています。そして、楽しく学校に行けるようになった子供さん、理由は様々ですが、要望の中で家を紹介したり、学校の入学手続きをお手伝いしたり、働き口を紹介したりと・・・様々な事を行っています。

地域の事を真剣に取り組むメンバーがいるために、西神楽地区限定ですが、住民の信頼をえて、各家庭の状況や高齢者が何を求めているのかなどお互いの信頼の上、住民を把握しています。

Q:病院へのバス運行とは?

地域住民の声を聞くと、高齢者が病院へ行くのが大変とのことでした。JR(電車)やバスもあるものの、足が弱ってきてタクシーを使わざるおえない人が多くいました。一回の費用が往復7~8千円かかるので、生活に物凄く負担がかかって大変でした。その住民たちの希望をもとに農水省の予算措置で3年間、地域を分けて高齢者を送り迎えを行う事業を実施しました。事業が終わっても続けるために、限定された会員のみですが、安い金額で継続してバスを運行しています。

Q:小学校跡地を活用して事業とは?

聖和小学校が115年の歴史を閉じて、平成28年3月に閉校しました。問題は閉校後、この校舎をどのように利活用していくかということです。教室部分は地域の土地改良区が移転することになったのですが、プール・体育館・グランドは市民委員会で管理運営することになりました。体育館・グランドは閉校後も市民に開放され活用されているのですが、問題はプールです。
平成7年に造られたプールですから、プールとして使うにはコストを考えるととても無理です。そこでNPOが市から無償貸与を受け、地域に散在する籾殻をベースに堆肥化の挑戦をすることとしました。昨年、試作した籾殻堆肥は地域の高齢者の持つ農地で、本年、人参栽培にも挑戦しています。これから収穫をする予定ですが、とても楽しみです。

Q:マチの環境づくり、ベンチ制作

バス停にベンチが無く、待ち時間がつらいとのご相談を受け、西神楽町内にある道立林産試験場様にお願いに行きました。職員の方にこころよく承諾いただき、ベンチの設計図及び木材を提供いただきました。その後の制作は、NPO職員で行い、バス停10か所及び老人の歩く道の途中に地主さんの許可を受けて設置いたしました。

Q:どんなアンケート調査を行っているのですか?

一昨年に、住民の意識調査を大々的に行い、旭川医科大学の看護学部を中心に旭川にある6大学の学生さんの協力のもと、ほぼ全戸に訪問して、あらかじめアポを取って聞き取り調査を行いました。高齢化が進んだまちのお年寄りが若い人と話す機会も少ない中、こちらがお願いしての聞き取り調査にもかかわらず、訪問先に大変喜んでいただきました。中には、話し込みに夢中で、4時間も帰ってこなかった学生さんもいました。
そして、嬉しかったのは、学生さんも大変喜んでいたということです。紹介いただいた大学の先生方には、今回の実体験が今後の彼らを大きく成長させると感謝までしていただいたことです。アンケート結果を旭川ウィルビーイング・コンソーシアム(旭川の6大学、各分野のプロフェッサー・名誉教授集団)が報告書として一冊の冊子にまとめて下さいました。
これは、西神楽の町だけの問題ではなく、同様の限界集落や老齢化の激しい町の住民にも共通するものだと思います。また、嬉しかったのはアンケートの回答率が住民の70%超えていることです。いくら田舎とはいっても日頃の活動やお付き合いがなければ、達成できない高回答率でした。

「西神楽のためだけに生きる」と言い切り、議員を引退してから選挙公約以上に本気で行動している理事長です。